物理的領域の因果的閉包性


アウトライターズ・スタジオ・インタビュー 第29回 「鈴木ピクさん」

2016-02-28 インタビュー


アニメの感想をブログやツイッターで表現されている方々に質問して答えてもらう
『アウトライターズ・スタジオ・インタビュー』
第29回はツイッターやアニバタで活躍中の鈴木ピクさん @pumpkin_crack です。


アニメを好きになったきっかけを教えてください。

元々は映画ファンだったのですが、近年の邦画にほとほと失望していた頃に『東のエデン』の放映が始まり、
自分が求めていたものはむしろ深夜アニメの世界にあったのではないかと感じました。


好きなアニメ作品を教えてください。

『響け! ユーフォニアム』
『UN-GO』
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
『NOIR』
『神霊狩/Ghost Hound』
『NieA_7』
『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』
『プラネテス』
『輪るピングドラム』
『メトロポリス』


好きな作品の中から1つ選んで、好きな理由を教えてください。

『響け! ユーフォニアム』

第四回『うたうよソルフェージュ』の一場面。
低音パートが教室で練習していると、気怠げな夏紀先輩はすぐに「ちょっと休憩」と言い残して、
いつものように窓際の席で風に吹かれてしまいます。
夏紀と距離の離れた久美子は、これはどうしたもんかなと低音パートリーダーあすか先輩に視線を移します。
一人最終学年であるあすかもまた、レベルに見合った単独練習をしているので教室前方の席で孤立しており、
こちらには背を向けたまま振り向いてくれません。

この時、実は久美子目線で見ればサボり始めた夏紀同様に不干渉を貫くあすかにも距離を感じる他、
夏紀はきっと「きっかけ」を待っているのではないかと共感できるとか、
あすかは後輩たちの惑いを察してはいるのではないかと推測されるとか、
僅かな時間でそうした多くの諸事情が台詞もなく汲み取れる―――から好きになった訳ではなく、

そうした諸事情を呑みこむ理解が訪れる寸前、『放課後の教室で不安げに見た、先輩の物言わぬ背中』が、
まるで自分が体験した光景のように生々しく脳裏に飛び込んで焼き付いてしまった初見時の刹那にはもう、
このアニメは一生モノになるな。そう悟っていたのではないかと、今にして振り返れば思います。
それほどに全ての要素が違和感なく、目に心に、フィットしてきた瞬間でした。


主に作品のどういう部分に注目しますか?

自分の中で、二つの要素に分裂していると考えています。

まず一つは、それぞれの作品が持つ細かな方向性を見極め、
制作者の目的が高度に達成されているものを称揚したいという、アニメファンとしての目線。
あまり露悪趣味は無いつもりでいるので、目的意識がより高そうなものほど素直に応援したくなります。
鑑賞するアニメのほとんどの場合はこちらの見方に該当します。

もう一つは―――これは映画ファンだった頃からそうなのですが―――子どもの時分よりおぼろげに
原風景として心に宿っていた、現実には存在しないだろうに何処かに在って欲しいと願う「理想の光景」。
その一端に似たイメージが、もしかしたら描かれているのではないかと目を凝らす希望の探索です。

それは時に『ARIA』のユートピアであったり、『電脳コイル』の後ろ暗くも懐かしい世界であったり。
一枚絵であったり、共感しうるテーマ性であったり、他愛ないやりとりの一幕であったりと姿を変えながら、
「どうして自分だけが知っているつもりだったこの光景を他の人が知っているのだろう」と驚けた時に、
たまらない多幸感に包まれます。

考察の世界では「印象批評」の一言で斬って捨てられる感覚が、自分にとっては最重要ファクターです。


あなたにとってアニメとは?

『攻殻機動隊』風に言えば『外部<疑似>記憶装置』。
パーソナルな憧憬を具現化してくれる理想の作品(ハードディスク)を見つけて、没頭(インストール)し、
いずれうまいこと実際の自分の体験とそのアニメを通した体験とがごっちゃになって記憶され、
回路が混線したまま魂(Ghost)に刻まれていけばいいと願っています。

勿論そうした琴線に触れる作品は数年に一本あるかないかなので、
普段は「数ある娯楽の一つ」として、アニメを特別視しないよう心がけています。


感想(考察)を書こうと思ったきっかけを教えてください。

以前はYahoo!映画のレビュアーとして様々な映画ファンと楽しくやりとりしていました。
多くの映画の魅力を不特定多数の人たちに伝えたいとレビューもブログも熱心に奮っておりましたが、
色々あってやる気を失い、その後アニメ感想をメインにしたブログを立ち上げました。
それも閉鎖してずるずるとTwitterに移行し現在に至ります。


感想(考察)を通して何を伝えようとしてますか?またどう伝えようとしてますか?

自分の理想とする方向へアニメ界が進んでいけばいいという大それた野心を、迂遠に。


あなたにとって感想(考察)とは?

『情報整理』。アニメから受け取ったモノの中から言語化済みの感想を吐き出すことで、
言葉にはならなかった何か本質的なイメージだけが自分の中に残るのではないかと考えています。
言語化出来ないからこその映像作品であり、
又、言語化できないものを言語に置き換える過程にこそ考察の醍醐味がある事も承知しているのですが、
考察の手法を学んでこなかった自分の場合、そうして心に残った部分を糧に、創作活動に励んでいます。
執筆は遅々として捗りませんが、今日から本気出すから。


ブログを書く場合、構想?日、実際に書く?時間、書いている時間に遊んでしまうことはよくある?

思ったことををそのまま、その時に呟いています。


好きなキャラ・制作会社・スタッフを3つ(3人)ずつお願いします。

好きなキャラ

クーデリア・藍那・バーンスタイン(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ)
アンチョビ(劇場版 ガールズ&パンツァー)
黄前久美子(響け! ユーフォニアム)

的確なポジションを掴み、しかし単なる駒では終わらない個としての躍動感も担ったキャラクターが好きです。
話の中核となって彼女の行動と共に舞台も展開も推移させていくクーデリア。
話の周縁を文字通りぐるぐると周り画面を賑やかす最良の動きを魅せたアンチョビ。
そして、その2つのパターンのどちらでもなくて/どちらでもある、久美子。
(アニメに該当する巻の)原作では観察者の役を持つ久美子が、
アニメの画面上では次第に部の中で相対的な立場に収まっていく。
監督自身が真のクライマックスと位置づける第11話『おかえりオーディション』終盤における
シンメトリックな構図の「片側」を彼女が担った時、主体と客体の境目が崩れて
物語のステージが一段上がるカタルシスを覚えました。

好きな制作会社

キネマシトラス(ブラックブレット、ばらかもん、ゆゆ式)
「最近の」J.C.Staff(さくら荘のペットな彼女、WIXOSS、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)
MAPPA(神劇のバハムート GENESIS、残響のテロル、GARO -炎の刻印-)

付記したタイトルがそのまま理由。
あらかじめ見せ場を決め打ちした堅実な演出で、キチンと一作一作確かな魅力を置きに来てるスタジオの中でも、
もう少し有名になってもいいんじゃないかなと願っている3社です。

好きなスタッフ

會川昇(鋼の錬金術師、天保異聞妖奇士、UN-GO)
小林靖子(劇場版TRIGUN -Badlands Rumble-、劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH、GARO-炎の刻印-)
長谷川圭一(神撃のバハムート GENESIS)

特撮系脚本家御三方に絞ってみましたが、特撮はまったくの門外漢です。
全体像を見通しながら、部分と部分を繋げる細かい工夫を欠かさない、物語のうねりを感じられる脚本が好きです。


影響を受けたブロガーと読んで影響を受けた記事を教えてください。

アニメ畑ではなく映画畑の方なのですが、unuboreda/やるおビッツ(@Mrbitss)さん(アニバタvol.9では小櫃 暢太郎名義)による
『ルー=ガル- ~忌避すべき狼~』評です。
それまで自分はどこか映画をメインの趣味に据え、アニメはサブカルとしてたまに楽しめればいいやと思っていたところ、
映画評に於いて信頼していたビッツさんの本気のアニメ評で襟を正した次第があります。
また、アニバタにお誘い頂いた絵樟(@EX5551)さんによる
『UN-GO』各話レビューも楽しみに拝読しておりました。
アニバタへの拙文の掲載に際し、たつざわ(@tatsuzawa)さん、群馬仁(@Gunmajin_puff)さんにも大変お世話になりました。


BD・DVD以外に購入するものは?(イベント参加可)

アニメ映画の舞台挨拶に一時期よく通っていました。アニメファンになってすぐのこと。
ただでさえ慣れない刺激だらけの深夜アニメ電波に脳内をやられながら、さらに花澤香菜さんのラジオを大量に摂取して合法的にトリップしていたある日、不眠も手伝ってラジオの興奮のあまり衝動的に池袋へ繰り出し、花澤さん目当てで『ブレイクブレイド』舞台挨拶まで駆けつけた経験が最初です。飛び入りで参加した斎藤千和さんですら「ふーん、そういう人がいるんだ」程度の認識でした(後に『R.O.D-THE TV-』を視聴して悶絶します)。
スタッフやキャストの姿を生で目にし、直に声を聴くだけで、次から関連作品にも血肉が通って見えてくるようになる事がイベント各種に参加する醍醐味だと思います。機械仕掛けで作られているのではなくて、多くの人の試行錯誤の集合体としての、本来ならいびつであって当たり前である映像作品と対峙するスリル。それこそがアニメを観るという事なのだという実感を体得出来ました。

やがて某型月映画の舞台挨拶前にトイレに駆け込もうと階段を駆け下りたら、階段を楽屋代わりにしていた某有名声優お二人に衝突しかける、という不審者寸前のアクシデントがあり、舞台挨拶通いは徐々に自重するようになりました。昨年は花とアリス殺人事件舞台挨拶、俺ガイルFes、SHIROBAKO秋祭、心が叫びたがってるんだ。舞台挨拶を満喫して非常に良い思い出となったので、そろそろイベントからはフェイドアウトします。


あなたが感想を書いていくためのモチベーションは、どこから湧いてきますか?またモチベーションを維持する方法など

現在モチベーションが途絶えております。他の方の回答を参考にさせて頂きます。


宣伝・アピール欄

アニバタVol.4,Vol.6,Vol.9に寄稿しました。よろしくお願いします。
ブログで昨年見終えたアニメをランキング付けしてみました 『2015年、最後まで見た全アニメをランキングする』。
リアクションを頂けたらとても喜びます。


・ インタビューにご協力頂きありがとうございました

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