物理的領域の因果的閉包性


アウトライターズ・スタジオ・インタビュー 第84回 「神無創竜さん」

2016-03-28 インタビュー


アニメの感想をブログやツイッターで表現されている方々に質問して答えてもらう
『アウトライターズ・スタジオ・インタビュー』
第84回はブログ『神な思想流』の神無創竜さん @k_soryu です。


アニメを好きになったきっかけを教えてください。

明確なきっかけはありません。
親がマンガやゲームが嫌いだったようで、小学生の頃はそれらにほとんど触れずに育ちました。そのため、家にあった大量のアニメのVHSやBSで放映されていた「衛星アニメ劇場」を見るくらいしか娯楽がありませんでした。中学生の頃、CSのアニマックスで『ギャラクシーエンジェル』などを見るようになったことでだんだんとアニメという媒体を意識するようになりました。また、アニマックスのCMで『攻殻機動隊』を知りそこから押井守の作品を鑑賞するようになって友達に布教したりしていました。そして、中学を卒業してから深夜アニメに詳しい友達(田舎では深夜アニメがほとんど放映されず、また当時はネット配信もなかったのでこういう人は珍しかった)ができてそこからいろいろな作品を教わりました。そうやって徐々に好きになっていったというところでしょうか。


好きなアニメ作品を教えてください。

『あしたのジョー』『平成狸合戦ぽんぽこ』『耳をすませば』『機動警察パトレイバー 2 the Movie』『らき☆すた』『キルラキル』『花咲くいろは』『秒速5センチメートル』『ef』


好きな作品の中から1つ選んで、好きな理由を教えてください。

『らき☆すた』
人生で一番ハマった作品。ひとえにアニメが好きといってもロボットが好きな人がいればキャラクターが好きな人もいるわけですが、『らき☆すた』はいろんな要素を含んでいたために自分の周囲にいた異なる趣味のオタクがみんなこの話をして盛り上がったのが、懐かしい思い出です。また、アニソン、アニラジ、声優、百合などの魅力を教わったのもこの作品でした。


主に作品のどういう部分に注目しますか?

最近はどこにも注目せず、何も考えないようにして見ています。気になる部分や引っかかる部分があれば自然とそればかり考えるようになり、見直したり調べたりして文章を書くと思うのではじめからどこかに注目するようなことはあんまりないです。
しいて挙げるなら百合です。


あなたにとってアニメとは?

空気みたいなものですかね。自分の周囲にいつもあるのに普段はその存在を意識しない。だけど、ふと立ち止まってそれがなくなった状態を考えると恐ろしくなる、という意味で。


感想(考察)を書こうと思ったきっかけを教えてください。

この質問以降、「感想(考察)」はボク自身が普段から好んで使う「批評」という言葉に置き換えさせていただきます。
東浩紀さんや限界研の批評を読むようになってから同人誌を作りたいと思っていたのですが、そんな実力もコネクションもなく諦めていました。そんな折、よく配信を聞いていた生主が同人誌を作ると言い出したので、自分もそこに参加して「字幕Flashの臨界点」というタイトルの批評を書かせていただきました。これが人生初の批評です。初めてなだけにどう書いたらいいのか分からず、宇野常寛さんの『ゼロ年代の想像力』を参考にしてなんとか書き上げました。こうして振り返ると、この時確立した文章の書き方が自分のスタイルになったのかな、と感じます。


感想(考察)を通して何を伝えようとしてますか?またどう伝えようとしてますか?

ボクの批評観は東浩紀さんからの影響が強く、基本的には彼の考え方を踏襲しています。それは、自分の好きなものについてそれを好きではない人(それに興味を持っていない人)に向けて語れ、というものです。特定の作品を語るにしろアニメ全体を語るにしろ、その可能性を作品やアニメの内側に閉じてしまっては広がりがありません。だからこそ、できるだけ外の文脈に接続することで新しい繋がりが生まれることに賭けています。
例えば、「山田尚子論 なぜ『たまこまーけっと』は太ももを映さないのか」(『アニバタ Vol.9』所収)では男女の視点の違いに着目することでセクシャリティの問題を論じましたし、「地元に囚われた女の子と愛することしかできない男の子」(『PRANK! Vol.2』所収)ではヤンキー論を踏まえ地方在住の若者(それだけを対象としたわけではないのですが)が時間と空間に囚われながらいかに生きるかという実存的な問題を論じました。このように、アニメを知らなくても楽しめるアニメ批評、アニメへの興味をかきたてるアニメ批評というものを意識しています。


あなたにとって感想(考察)とは?

ソンタグは「批評を書くということは(中略)知的な厄介払いの行為である」(『反解釈』)と述べています。彼女は「心を魅惑しかつ悩まさせる問題」について批評を書くと、それは自分から遠ざかっていくというのです。この感覚は非常によく分かります。ボクは自分が気になった疑問についていろいろと考えを巡らせたり、他の人と話したりしてもどうしても解決ができないことがあります。なので、そういう時は書き言葉と向き合うことによって初めて納得のいく答えに到達するのです。そして、一度文字にしてしまえば、「心を魅惑しかつ悩まさせる問題」はボクから離れていきます。それはスッキリすることでもあれば、いささか寂しいことだったりします。けれどもボクは、書くことによってしか前進できない性分なのでそれを繰り返すことで自分自身と向き合っています。
このことについてソンタグは「私が書いてきたのは、厳密に言えば、批評でもなんでもない、あるひとつの美学、すなわち私自身の感受性についてのあるひとつの理論を築くための個人的症例研究(ケース・スタディ)にほかならなかったのだ」と書いています。彼女はいろいろな批評を書いているうちに、自分が「特定の作品についての特定の判断」ではなく、「ある種の判断や趣味の根底にある暗黙の前提」を明らかにすることを求めていたことに気づきました。これも非常に興味深い話です。ボク達は個々の作品に何らかの評価を下しますが、問題なのはその評価をしている自分がどういう尺度を用いてその作品を評価したかということなのです。
なので、ソンタグにならって質問に答えると、自分自身を知るための「個人的症例研究」あるいはそれを知ることで自分が抱える問題に決着をつける「知的な厄介払い」です。


ブログを書く場合、構想?日、実際に書く?時間、書いている時間に遊んでしまうことはよくある?

もうブログのエントリでアニメについて書くことはほとんどしていないのですが、書く時は半日~1日ほどかけていたと思います。プロットなどは特に作らずに、普段考えていることをいきなり書き始めるので、構想にかける時間はほとんどないような。あと、好きで書いているので書いている時は書くのに集中していますね。


好きなキャラ・制作会社・スタッフを3つ(3人)ずつお願いします。

キャラ:桂言葉、芙蓉楓、柊かがみ
制作会社:TRIGGER、京都アニメーション、シャフト
スタッフ:高畑勲、大沼心、松尾衡


影響を受けたブロガーと読んで影響を受けた記事を教えてください。

あまりブログ記事を読まないので思いつかないのですが、じぇいじぇいさん(@JJ199X)のツイートが一番刺激を受けていると思います。


BD・DVD以外に購入するものは?(イベント参加可)

研究書・専門書
大学院でアニメーションの研究をしているので、どうしてもこの比重が大きいですね。


あなたが感想を書いていくためのモチベーションは、どこから湧いてきますか?またモチベーションを維持する方法など

モチベーションの維持については考えたことがありません。なぜなら、批評を書くということは呪いだと思うからです。アニメ作品は深読みをしなくても楽しめるように作られているのに、どうしてもそれをしてしまう。それどころか、それをしないと自分が抱える問題に答えを出すことができない。そんな風に書くことを強いられている状態は、もはや呪いとしか言いようがないものです。ボクは表向きは「いろいろな人に読まれるような批評を書け」とうそぶきますが、やはり究極的には自分自身のために書いているのだと思います。


宣伝・アピール欄

最近書いた批評として、「地元に囚われた女の子と愛することしかできない男の子――京都アニメーション・橋本紡・セカイ系――」があります。これは自分が書いたものの中でも最大限の「知的な厄介払い」で、自分の地元に対する思いに決着をつけたものです。『PRANK Vol.2』(http://siguremurasame.jimdo.com/books/prank-vol-2/)という同人誌に収録されていて、イベント頒布や通販もそのうちやると思うので気になる方は、羽海野渉(@WataruUmino)さんのツイートをチェックしてください。
あと、ボクは「普通な人」という同人誌の編集長をしています。現在はあまり活動らしい活動をしていないのですが、水面下で新たなプロジェクトを計画中なのでお待ちください。
最後に、「金曜だから夜ふかし」というタイトルで金曜の夜にツイキャスをやっています。こちらはいろいろと試行錯誤の段階で、配信の日時等が変更になる可能性がありますがその場合はツイッターで情報を流すのでぜひ遊びに来てください。



・ インタビューにご協力頂きありがとうございました

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