物理的領域の因果的閉包性


マイベスト「台詞&演技」エピソード7選

2016-08-31 ベストエピソード


元記事:マイベスト「台詞&演技」エピソード7選 - “破滅”と“再生”の美学(真弓の雑記・はてな出張所) @knkmayumi



『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)第44話「シュバルツ散る! ドモン涙の必殺拳」
■PICK UP台詞-シュバルツ・ブルーダー/キョウジ・カッシュ(CV:堀秀行)の、


「お前もキング・オブ・ハートの紋章を持つ男ならッ!!情に流され、目的を見失ってはならんッ!!それとも――こんなキョウジのような悲劇が繰り返されてもいいのか?!やるんだッ!!デビルガンダムの呪いから私達を解き放つためにも!!」




弟が兄とその人格コピーを直接葬るという壮絶な場面ですが、兄のキョウジ/シュバルツ役、堀秀行さんの絶叫がすごい。実際に長台詞を叫んでみるとわかりますが、頭に血がのぼって血管が切れそうになったり目眩がして危険なだけでなく、声が裏返らないよう喉や腹をせいいっぱい張った状態にせねばならず、聞き苦しくないように発声するのは大変なんですよね。それでも、家族をバラバラに引き裂き過酷な運命へと陥れたデビルガンダムを破壊するまたとないこの時のため、弟ドモンに厳しい言葉で「介錯」を願う、その凛とした叫びに、胸を打たれないわけにはいきませんでした。作画もまた渾身ですが、その力強い絵をさらに一歩越えていくような、滅多にない熱演です。

一瞬なのですが、石破天驚拳を放つゴッドガンダムのカメラアイに透過光が入って、目尻に涙が溜まっているかのように見えるニクい演出を発見したので、その点も含めて再見して良かったと思えるエピソードです。



『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)第弐拾弐話「せめて、人間らしく」
■PICK UP台詞-惣流・アスカ・ラングレー(CV:宮村優子)の、


「汚された……わたしの心が……加持さん……汚されちゃった……どうしよう……汚されちゃったよぉ……」




映像上のレイプと例えても差し支えないような、強烈なエピソード。瞬間でも、心を重ねると殺される。
声優としての華々しい活躍期間はそれほど長くなくても、宮村優子さんはちょっと特別な存在だなと、今振り返ってみてもそう思います。
でも私にとっては『愛天使伝説ウェディングピーチ』珠野ひなぎく役の人です。
(締切間近につきここだけ簡潔コメントですみません)



『勝負師伝説哲也』(2000年)第十一局「闇の終わり」
■PICK UP台詞-印南善一(CV:戸谷浩次)の、


「じゃあな哲ちゃん。お互い、達者に打(ぶ)とう」

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毎回、OP前に「勝負の世界でしか、生きられない人々がいる」というナレーション(青野武さん)が入るのが格好いいのですが、言葉をきつく言い換えると、登場するキャラクターはみんな表社会に適合できなくて麻雀で日銭を稼いでいるろくでなし共なんですよね。このエピソードに登場する印南善一なんか酷いもので、対局中以外はヒロポンを入手する為の金を求めて地べたを這いずり回るような暮らし。卓上の牌を全て記憶できる「眼牌(ガンパイ)」という超能力じみた特技を持っていること以外は救いようがない人物……なのに、何だか格好よくみえちゃうから、不思議なんですよね。

日常での情けなさと、対局時の人間離れした凄み、そのギャップを絶妙に熱演してくれたのが、戸谷浩次さんでした。かつて『北斗の拳』ジャギ役でみせてくれたようなアウトローの魅力がここでも全開で、当時麻雀のルールを覚えたてだった自分の心に、その壮絶な生き様を刻みこんでくれたエピソードだったんです。終盤、松崎しげるさんの歌唱する挿入歌が流れながら、雪夜の闇に消えていく印南の姿が入る演出は、ベタなんですけど、最高でしょ。

「麻雀を」「打つ」と書いて「ぶつ」と読む。この読みは彼ら裏社会の雀士のあいだだけで通じる隠語、ジャーゴンであり、また彼らにとって別れてから次に会う時は殆ど卓を囲み対局をする時だけであり、麻雀を通してしかお互い関わりを持つことがない、という暗黙の了解があるわけです。生きている限りは麻雀を続けるのが俺達だから、「お互い、達者に打(ぶ)とう」が合言葉になるんだろうな……と想像すると、徹底した生き方だなぁと思う。

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別のエピソードですが、大塚周夫さんの演じる房州(主人公・哲也の師匠的存在)もまた素晴らしいキャラクターですね。房州との最後の対局を描いた第十八局「別れの天和」と、どちらを選出するか最後まで悩んだことを、余談として付け加えます。



『アマガミSS』(2010年)第22話(絢辻詞編 第二章)「ウラガワ」
■PICK UP台詞-絢辻詞(CV:名塚佳織)の、


「さぁ、復唱して?僕は何も見ていません、絢辻さんは裏表のない素敵な人です」

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わりと↑の台詞を書き出したかっただけでもあるんですけどね……(笑)
アニメ版の放送開始前から、絢辻詞が「優等生の絢辻さん」「ドスの利いた声の黒辻さん」「優しい白辻さん」などなど色んな面を見せてくれる複雑なキャラクターだということは、ゲーム版をプレイして予備知識があったわけです。幾つかのルートを通ってエンディングまで辿り着いたりして、何となく人となりはわかった。じゃあ、アニメではどうなるんだろう?と期待して視聴したのですが、どうもこのエピソードの彼女は見覚えがないような……ゲームの時よりおっちょこちょいで、照れ方が素直で、純一(主人公)と関わる時はワクワク声が弾んでいる。「声が違うぞ?」となってからしばらくは↑の台詞を披露した神社でのシーンを何度か味わってみました。それでだんだんと、黒でも白でもない「ちょっぴりちょろいアニ辻さん」像が固まってきて、ああ、アニメでの彼女はこんな感じなんだな……と納得できたわけです。しかし同時にそれは、彼女がまた新しい仮面をひとつ被ってしまったという事も意味するわけで、ますます本当の顔がわからなくなってしまいましたね。

名塚佳織ヒロインと相対する時は、えてして「完成することのないルービック・キューブ」に挑んでいるような手ごわさを憶えてしまうのですが、『true tears』の湯浅比呂美と双璧を成すように、絢辻詞は難敵ですね。だとしても、素敵な人だ、ということは間違いないのだけど。

モヤモヤ考えてるうちに、名塚さんの歌うキャラソン「嘆きの天使」が流れるEDへと続くわけです。絢辻さん、歌はちょっと苦手なのかなって……(失礼)



『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』(2012年)第1話「おにあい(お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ)」
■PICK UP台詞-姫小路秋子(CV:木戸伊吹)の、


「わたしがお風呂に入っているのに、どうしてノゾキに来てくれないんですか?!」

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イブキ・キド=チャンの鮮烈なデビューを飾った第1話。開始6分で↑の台詞に到達するスピード感もさることながら、秋子の矢継ぎ早な妄言にこちらもタジタジ。倫理がねじ曲がったまま突き進むのが『おにあい』の魅力で、それはこのとてつもない妹あってこそというものです。当時14歳、初のレギュラーキャラ、初の主演クラスでこの役を演った意義は、結構あるんじゃないかな……と思っています。出演にあたってのインタビューなど、当時のキド=チャンの心境が伺えるものがあったら改めて読む返してみたいものだな、と気になってしまいました。

特に第一話ということもあって、さ行、ら行が詰まって聴こえたり、絵と声の抑揚が微妙に釣り合ってなかったりがチラホラありますが、だからこそ秋子の不器用さを補強するところもあるのかな……とも感じます(さんざん初夜について妄言を吐きながら、面と向かい「(家族として)大好き」と言われたら赤くなって卒倒してしまうのがかわいい)。そういった、洗練されてないからこそ出せる味ってあると思うんですよ。それは例えば『スケッチブック 〜full color's〜』の頃の花澤香菜さんだったり、『コゼットの肖像』の頃の井上麻里奈さんだったりにも感じたことがあるもの。技術的な巧拙を超えた魅力を、このエピソードでは見出しました。

もし誰か声優さんを好きになったら、デビューしたてのキャリア初期にどう演じていたか、振り返って聴いてみるという楽しみ方もあるよ、と提唱したいと思います。



『ガッチャマンクラウズ』(2013年)第9話「Forgery」
■PICK UP台詞-ベルク・カッツェ(CV:宮野真守)の、


「メッ、メメッメッ、メ、メシウマァ~~~~♪♪♪」

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絵からはみ出してしまうほどの芝居を、時々耳にする時があります。例えば「シーンにおいて要求されるような芝居づけができてない、作画の水準が低い」パターンもありますが、それとは逆に「演者の熱が入りすぎて、通常のアニメ絵では表現しきれないほどの声を当てている」というような場合ですね。通常は極力排除するべきの息遣い(ブレス)をあえて強く入れたり、台詞の1センテンスの中で極端に緩急や強弱をつけたりなど、日本のテレビアニメにはそぐわないかもしれない芝居を用いる傾向のある人もいる。あくまでもシロウトの個人的な印象ではありますが、名前を挙げると、女性では朴璐美さん、沢城みゆきさん、小林ゆうさんなどが浮かびますが、男性なら宮野真守さんがまず筆頭に挙がります。

『クラウズ』のベルク・カッツェは、宮野さんのそうした持ち味が強くでたキャラクターだと思います。出自も正体も謎のまま、人々に悪意をばら撒き、それによって起こる災厄を眺めては悦に入る……。現実にいたら絶対近づきたくないけど、アニメの登場人物としては魅力的に映ってしまう罪な存在。そんな設定だけでもおいしいのに、宮野さんの「フリーダムな」声の芝居が、カッツェをより高次元のキャラクターに昇華させてくれました。時に笑い転げ、時に飛んで跳ねて、時に歌い踊る彼を「格好いい」と思ったら負けなんですけど、これだけの存在感じゃあ唸らされてもしょうがないですね。かつて『DEATH NOTE』のアニメ版で、死神と契約し殺人ノートを操る夜神月を演じた宮野さんが、この役……というキャスティングの妙も特筆したいところ。

この第9話では、劇伴に合わせ高らかに歌い上げるカッツェが、クライマックスに向かう物語を大きく盛り上げてくれます。↑の台詞の場面は、音楽担当の岩崎琢さんをも唸らせたワンシーンであり、私も感嘆するばかりでした。気になったら確認していただければと思います(このエピソードだけでもいいし、できれば、第1話から)。

岩崎琢 on Twitter: "サウンドトラックに収録されている「ヒュドラの標的」は勿論カッツェの曲なんだけれど、ここまで見事に一つになるとはね(笑)音楽を流しながらアフレコをしたわけではないのに、最後の「メシウマ〜」はテンポ、キーも曲にぴったり合っていて、ワタクシ非常に驚きましたです、はい。"



『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』(2013年)第3話「幼なじみの涙で修羅場」
■PICK UP台詞-春咲千和(CV:赤﨑千夏)の、


「わたし、えーくんと幼なじみなんかイヤッ!もっと普通で、普通に同級生でよかった!幼なじみなんて、ホントに何一ついいこと無い!」

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失礼ながら、このエピソード放送時点では赤﨑千夏さんについてそれほど存じてなくて、せいぜい『キルミー』やすな役程度しかイメージがなかったんです。だからこの春咲千和というキャラも、第一印象ではちんちくりんだな~くらいしか思わなかったし、アニメ自体も1話2話を観た時点では「OPアニメはかわいいけど、ジョジョパロの入り方もちょっと強引だしこの先面白くなるのかにゃ~」とか高をくくっていたわけです。そこでこの第3話がきて、急にグワッと掴まれましたね。
モノローグかと思わせるような小さな呟き声から一転、堰を切ったように本音がこぼれ出し、聞き分けのできない幼児のように不満をぶつける。「えーくんえーくん♪」と普段は小動物みたいなのに(チワワという渾名がある)、そこからの落差がすごい。差し出しされたハンカチを払いのけ、部屋灯りの陰へと去っていく千和(この場面のキレたカット割り!)。そして追い打ちをかけるような幸福だった頃の回想シーンが入り、時を経て生じた幼なじみ同士のすれ違いを、より克明に描きだすんですよね。切なすぎる。やられちゃいました。
赤﨑さん!幼なじみ、いけるやん!今後の活躍に大いに期待したい声優さんの一人です。

それにしても、「幼なじみ=負け組フラグ」とか最初に言い出したのは誰なのかしら?(←この引用は伊藤計劃リスペクト!『俺修羅』観てたら痛いパロ台詞を言ってみたくなった!)



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