物理的領域の因果的閉包性


アウトライターズ・スタジオ・インタビュー 第149回 「蒼桐大紀さん」

2019-01-26 インタビュー


アニメの感想をブログやツイッターで表現されている方々に質問して答えてもらう
『アウトライターズ・スタジオ・インタビュー』
第149回は 蒼桐大紀さん @AOGILI です。


アニメを好きになったきっかけを教えてください。

OVA『天地無用!魎皇鬼』です。
物心がついた頃から自動車や飛行機、艦船や宇宙船といった乗り物が好きで、東宝特撮映画と並行して『宇宙戦艦ヤマト』をはじめとする自分が生まれる前のSF系アニメはレンタルビデオなどで見ていました。
そんな私にとって、SFでありメカも出てくるのに和風な世界観を強く押し出した作風は斬新であり、魅力的な未知との遭遇でした。個性の強いキャラクターに惹かれたこともあり、好きなものを形作っていた多くの要素に気づかされた作品でもあります。

このほぼ直後に『新世紀エヴァンゲリオン』の本放送を見たのですが、自分でも意外なほど影響を受けていません。同じ90年代のアニメでは『機動戦艦ナデシコ』や深夜アニメから受けた影響が大きく、「生きている限り時間は流れていくし、成長であれ老化であれ生きていくしかないんだよ。正解なんてものはないけどね、みたいな?」と、いま言葉にできるようになった素地はここにあると思います。

90年代半ばから2000年代初頭が視聴数のピークで、以降は年々減少し特に2006~08年頃のTVアニメはほとんど見ていません。
しかし、ある時を境に「もっと色んなものを見よう」という思いが強くなり、アニメについても意識して見る本数を増やしました。最初は無精してニコニコチャンネル頼りだったのですが、次第に番組改編期には新番組のまとめサイトをチェックするようになり、2016年半ば頃からはTVで見られる作品はなるべくオンタイムで見るようになりました。


好きなアニメ作品を教えてください。

『さよなら銀河鉄道999』映画
『王立宇宙軍~オネアミスの翼』映画
『メガゾーン23』OVA
『装甲騎兵ボトムズ(関連全シリーズ)』
『新世紀GPXサイバーフォーミュラ(TV版のみ)』
『天地無用!魎皇鬼』OVA
『マクロスプラス』OVA
『機動戦艦ナデシコ』
『serial experiments lain』
『VIRUS ‐VIRUS BUSTER SERGE‐』
『カウボーイビバップ』
『ベターマン』
『るろうに剣心‐追憶編‐』OVA
『人狼 JIN-ROH』映画
『青の6号』OVA
『灰羽連盟』
『サムライチャンプルー』
『戦闘妖精雪風』OVA
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』映画
『機動戦士ガンダム MS IGLOO』OVA
『スカイガールズ』
『刀語』
『人類は衰退しました』
『楽園追放-Expelled from Pradice-』映画
『ファイアーボール(関連全シリーズ)』
『ハイスクール・フリート』
『プリンセス・プリンシパル』
『フレームアームズ・ガール』
『少女終末旅行』

意図的に偏った部分をピックアップしてみました(多いな!)。作品名の後に註記がないものは、全てTVアニメです。なお、2018年度作品はまだ自分内での位置付けが定まっていないため、2017年までとしました。


好きな作品の中から1つ選んで、好きな理由を教えてください。

『灰羽連盟』を挙げている人がなかったら自分が書こう、と思っていたのですが、当然のように既出でした。
それでは皆さま、『VIRUS ‐VIRUS BUSTER SERGE‐』の時間です。

全12話。大張正已監督・キャラクターデザイン・脚本(一部)作品。あの『serial experiments lain』と同じ1997年の深夜アニメです。
クセの強い大張キャラは好みが分かれるところでしょうが、それ故に仕草や表情がくっきり表れるため、「目は口ほどにものを言う」を絵に生々しい感情を宿らせる声優陣の演技が見事です。
SF作品としては、いまでは当たり前となった仮想空間描写、ネットワーク犯罪、インプラント(ネットアクセス用のコンピュータチップ)etcなどを扱っていますが、この作品はそれらを通して普段は表に出てこない心の動きを精緻に描いています。
過去を持たない主人公・サージ(三木眞一郎さん演)が静かにしかし強く「自分は何者なのか? 自分は何がしたいのか?」を求めていく様は、時代がどれほど変わっても人間が縁切りできない業だと思います。そして、このサージの静かなあがきと部隊の仲間との人間関係構築を通じて、「近しい他者の存在が自分の意志のありかを教えてくれる」というストーリーの骨子が浮かび上がってくるのです。
『VIRUS』が私にとって忘れがたい作品になったのは、ヒロインのエリカ(飯塚雅弓さん演)が発した「あたしを肯定できるのはあたしだけよ!」という台詞があったからです。これは「自分を否定できるのは自分だけ」ということでもあるため、私はこの言葉を常に心の隅に置いています。
人間は独りでは生きていけないからこそ、他人を通して自分を再認することが大切なのだということを描いている作品だと思います。
次回予告でのミレイ(池澤春菜さん演)の流れるような発音による英題タイトルコールも印象的でした。


主に作品のどういう部分に注目しますか?

シーンあるいはカット単位での映像の見せ方と、その音響全般(音声、効果、劇伴)のタイミングに注目しています。

前者は絵コンテとカメラワークに当たることなのかもしれませんが、私はこれら延長線上にある認識のさせ方だと考えています。
焦点位置・焦点移動・画角の取り方は人間の視野を反映であり、いま見ている映像は「どこからどの様に見たものなのか」という認識のさせ方だと思います。

この認識のさせ方を支えているのが、後者の音響のタイミングだと考えています。映像は一時停止して1カットの絵として見ることもできますが、音響は時間の流れとは切り離せないからです。そして、音は絵や文字に対して情感を付加することができます。
たとえば、文字は情報が先行しますが、音声は感情が先行します。同じ台詞でも演技の違いや響き方の違いで、印象どころか意味さえも変わります。同じように効果音や劇伴は、どのタイミングでどういう挿れ方をするかによって視覚情報の指向性を持たせられます。

これらが作画や声優の演技を伴ってキャラクターに反映され、脚本からストーリーを形作り、「何を描き、何を伝えようとしているのか」を伝える要になっていると思います。同時に、私自身が「どう感じ取り、何を思うのか」だとも思っています。
つまり、最後は自分に返ってくる部分だからこそ注目しているわけです。


あなたにとってアニメとは?

視聴覚へイメージをダイレクトに伝える表現方法であり、極めて贅沢なしかし高級ではない娯楽を消費者に提供する手段です。商品であると同時に作品でもある事を尊重しつつ、遠慮や気構えなく楽しんでいきたいですね。
「つまらんと思ったらすぐ次へ行け。面白いものはまだまだたくさんある」というのは山下いくとさんの言葉なのですが、まさにその通りでして、不満を抱いても文句を言う暇が惜しいので見ていられなくなったら黙って切ります。


感想(ツイート)を書こうと思ったきっかけを教えてください。

物事の悪いところや気に入らないところへの不満を口にするのは簡単ですが、反対に良いところを見つけて褒めるのは難しく、実際下手くそだったので「(作品の)良いところを見つけて褒める練習をしよう」と思ったのがきっかけです。
この対象にアニメを選んだ理由は、瞬間的な印象を最も強く受ける反面で、そうした瞬間の印象を最も忘れやすい作品形態だと思ったからです。また、ツイートの文字数制限が短く要点をまとめる練習にもなると感じたこともあります。


感想(ツイート)を通して何を伝えようとしてますか?またどう伝えようとしてますか?

基本的には自分用のメモなのですが、第三者が読んでもわかる程度に書くようにしています。どこがどの様に良かったのかとか、どんなところに注目したのかがわかるように。良かった探しがきっかけなので、少なくとも好印象を抱いていることがツイートからわかるように。そういった点を意識して書いているつもりです。


あなたにとって感想(ツイート)とは?

良かった探しに始まって、いまでは定期的な外部出力手段です。文章は書かないと手が忘れますから。庭に出てちょっと素振りをするような風情です。
あと、SNS全盛の時代ですので、自分が「良かったです」と上げた声が作っている人達の応援になれば良いと思っています。


好きなキャラ・制作会社・スタッフを3つ(3人)ずつお願いします。

キャラ
ホシノ・ルリ(『機動戦艦ナデシコ』)
TVシリーズを通して見られた変化と成長が強く印象に残っています(キャラだって歳を取るんです)。後半のアバンタイトルでのモノローグでは、声のトーンが微妙に変わってきていて、そのいくつかは暗唱できます。できてしまいます(苦笑)

ジン(『サムライチャンプルー』)
冷めているように見えて侍らしい血の気の多さを持っており、達観しているように見えて情に篤い。寡黙ながら冗談も介するし、ムゲンと一緒に色街へ駆け込むような一面もある。ごく自然に清濁併せ持つ姿には親しみを覚えます。

アンジェラ・バルザック(『楽園追放 -Expelled from Paradise-』)
知識を有していることと認識して経験することの違いを思い知っていく過程を経て、組織ひいては世界と自身を対照して意志のありかを確認する。不完全だからこそできることがある。そういう当たり前のことを当たり前に再認していく姿には「鏡を見なさい」と言われているようで楽しいですね。

制作会社
スタジオぬえ
Production IG
WHITE FOX

スタッフ
大野木寛さん(脚本家)
大張正已さん(メカニック/キャラクターデザイナー・監督・作画)
大谷幸さん(作曲家・劇伴)

※キャラについてはやや強引に選んだので、一応理由を書き添えました。


影響を受けたブロガーと読んで影響を受けた記事を教えてください。

有村行人さん(@KenKen_t)。
見たものの要所を的確に捉え、知識と掛け合わせて言葉に変換された文章には学ばされることが多いです。注目する点が重なることが多いのですが、それ故に見解が異なる際「そういう見方もあるのか!」とあらたな気づきを得ることがあります。ぶっちゃけ、今回のインタビュー企画の募集も、有村さんからのRTで知りました。常に一歩前を進んでいるように感じるのは年齢差ゆえのものだと思いますが、それならば尚のこと自分も進むことを止めないようにと思っています。

Twitterでは、ハッシュタグを辿ってみると鋭い指摘を見つけることがあり、RTや引用RTすることはありますが大体いつも違う方ですね。

最近は定期的に読んでいるアニメ感想ブログはないのですが、『たまたまごはん(http://makaronisan.hatenablog.com/)』のたまたまごさん(@tamagomago)は、ぎりぎりまで潜って獲物を掴み取ってくるような深い考察を書かれるので、そうとは知らず記事を読んでいると「やはりあなたですか(さすが)」と思うことは多々あります(笑)


BD・DVD以外に購入するものは?(イベント参加可)

サウンドトラックCD、主題歌などのDL配信(ごく稀にマキシシングルCD)、そしてプラモデルをはじめとした模型類です。最近はCDとプラモの出資率が反転しています。ああ、次に組むガンプラを買ったばかりだというのに、突如フレームアームズ・ガールのバーゼラルドを買いたい衝動ががが……。


あなたが感想を書いていくためのモチベーションは、どこから湧いてきますか?またモチベーションを維持する方法など
 
先述した通り素振りのようなものですから、モチベーションというものを意識したことがありません。強いて言うなら、TLで誰かが実況なり感想なりをツイートを書いていることそれ自体ですね。動機はなんであれ、感じたことを言葉にしている人を目にしたら手前が怠けているわけにはいかない、といった風情です。もちろん、そんな余裕があればの話ですが(苦笑)


宣伝・アピール欄

アニメの感想に限らず、興味関心が強い事柄について気になったときに気になったことをツイートしています。
浮き世に漂う読み物のひとつとして、構えず楽しんでいただければ幸いです。

発表形態に関わらずひさしくこの名義で寄稿していなかったので、こうした機会を設けて下さったぎけんさんに感謝致します。

余談として、この記事を書くに当たって過去のインタビュー記事をざっと読んだのですが、いちばん驚いたのは『プラスチックリトル』を推している人がいたことです(笑)


・ インタビューにご協力頂きありがとうございました

関連記事


Copyright © 物理的領域の因果的閉包性 All Rights Reserved.